Bits Archive: February 2006

February 3, 2006

執筆活動中

2月だ。この一週間、風邪で不調。
映画サウンドトラックの製作過程について原稿を書いている。話は去年の春に遡る

日本音響学会からの執筆依頼に自然と躊躇が走る。

実は根回ししていただいたのが、日本でサラウンドを推進してきたキーパーソンの吉川昭吉郎氏と沢口真生氏だったので辞退も憚られるが、ここは不釣り合いな執筆になる不安を正直に申し上げた。
僕はエンジニアの履歴がある訳じゃないし、学術研究的な雰囲気に沿った内容の「論文」はとてもじゃないが自信がない。大体、論文らしい論文なんて大学の卒業論文くらいで、「ランボーの手紙」というテーマで仕上げた論文自体は後で誰かが大学図書館から借り出したと聞いたから、一応読める内容だったかも知れないと思うが、調査とか比較とかのメソドロジーは何もないし、分析というより思いを凝縮したような書き物だった。
まあ、当時の文学部はそれで良かったと思う。しかし理系の学会論文となるとそうは行かない。

「雑誌記事なら喜んで書くんですけど・・・」

しかし逆に激励されてこの話は進んでしまった。

その後忙しさにかまけて実情調査も怠ったまま期限が迫り、「尻に火」の状態で11月に執筆開始した。慌ただしく音響コンサルタントの森幹生にくっついて自宅近くの東映大泉撮影所を覗きに行き、網羅する内容と構成の検討が始まる。成城方面にも出向こうとしたが時間的に調整できず、まずは会社のホワイトボードに情報を並べて考える。こういう俯瞰図になると森君もお手上げなので、やはり東宝の多良さんに電話で知恵を借りながら図表を埋めていく。


パソコンに向かって原稿を書きながら、ふと脳裏をよぎったことは、このままハリウッドも見ないでこの論文を仕上げるというのはあり得ないよなという思い。そう考えるとその日のうちにBurbankオフィスと連絡してどの日程なら取材ができそうか、既に組まれた自分の予定とのバッティングはないか、フライトは行けるか、などを粗方見極めていた。この機会に次世代エンコーダの開発状況も確認という短期ロス往復だ。11月中旬にハリウッドの現状を取材し、ちょうど新装オープンされたワーナーのポストプロスタジオお披露目にも顔を出して帰国した。チキンリトル報告はこの時のおまけ記事なのだ。


月末に何とか原稿を書き上げ無事発送完了。1月のCESから後はずっとスケジュールに追われてきたが、心配していたコメントが編集者から入る。簡単に言えば「プロローグをもっと客観性のある内容で」。それ見たことか!自然体じゃダメなのよ。

ということで、この一週間、映画のサウンドトラック作りの過程についてまだ原稿を書いている。

と、今晩ここまでのリアルタイム・アップデートでした。



February 4, 2006

ヒンギス復活

土曜の朝、東レの切符があるけど行けなくなったので要る?とうれしい電話が飛び込んできた。今日は東レパンパシフィックの準決勝で「新旧女王対決!」と騒がれるシャラポワ対ヒンギスの試合がある。

こんなとんでもない朗報だというのに、今朝の自分と来たらあいにくの風邪で頭痛もひどく折角の申し出を辞退するしかなかった。今日はテレビ観戦だ。




基本的にシャラポワのストロークは一本調子にパワーで押すが安定感がない。オールラウウンドにレベルが高いヒンギスは3年のブランクはあるが全豪でなかなかの存在感を示していたし勝機はあると僕は見ていた。それがまた何よりの期待でもある。

緊張感のある試合が始まり、予想通りの展開だ。2ゲーム目、デュースの場面で見せた配球の絶妙さを見て、僕は彼女の勝利を予感した。彼女もある程度それを確信したと思う。プレースメント、緩急のコンビネーション、スライスやロブでの攻め、かつての天才少女プレーヤー、ヒンギスの技は今も健在で多彩だ。ここのところパワーが勝利者(野球ならホームランだけの試合)という図式が方程式化してしまって、僕はテニス観戦に興味を失っていたが、またこれでしばらくテニスが楽しめそうだと感じるとともに、久しぶりにコートに戻ってみようかと思うくらい刺激になった。

いやー、それにしても最後は心理的にも行き場を失ったシャラポワの自滅でしたね。それから僕は彼女の絶叫は気にならないですね。昔のセレシュの方が耳ざわりでした。




February 16, 2006

本日のお奨めワイン

日本支社で5年間一緒に仕事をしてきたJohn君が本社のゲームビジネスディレクターに昇進し、本日帰国の途に発った。この異動を祝ってちょっと奮発した送別会をということで、先週木曜日に広尾のhAruというレストランを借り切ってのディナーパーティをした。




20名くらいで一杯になる小さな店だが、料理の評判は高い。いただいたのは鯵のカルパッチョの前菜と魚、肉料理の間に、フォワグラとトリュフの一皿が入る豪華かつ量も多いコースで、こんなの初めてという社員も結構多かった。ここのワインコレクションはなかなかのもので、名だたるたいていの銘柄は見つかるだろう。僕らはそんな極端に贅沢は出来ないので、リストの中からシャンパン、白、赤それぞれにBeaumont des Crayeresノスタルジー、サン・ヴェラン・オン・フォ、バルメ・アルテ・エゴを選んでおいた。このマルゴーの赤は完全にフォワグラ料理には負けていたと僕は感じた。次回はもうちょっとしっかり香りと濃厚さのあるボトルで挑戦したい。


週末はネットでブティックもののいわゆるセカンドワインを扱っているショップを暇つぶしに捜していて、米国のショップでClos Margalaineの2003を$19.99で出しているのを発見。これはマルゴーのカルトな生産者Marojalliaのセカンドなので、この価格なら次回の出張に照準を合わせて入手できないかな。

それよりも思いがけない大遭遇だったのは、オーストラリアのケズラー(Kaesler)というワイナリーで、これは国内で扱っているのをこれまで見たことがなかった。1年ほど前に豪州土産にもらった2003年もののAvignonというワインはローヌタイプのグルナッシュ・シラー・ブレンドで、とても寝かせておく我慢がなく僕はすぐに飲んでしまったが、そのうまさには舌を巻いた。その2004年ものがショップに出ているではないか!しかも現地でも豪$30くらいはすると思うのに売値は2980円となっている。これはすぐ買うしかない! 僕はほんの3-4年前まではオーストラリアワインにまるで興味を持っていなかったのであれこれ知らないが、これ以上うまいと思ったのはMitoloくらいだ。ホント騙されたと思って試して損はないはず。hAruオーナーの楽天さんでは2店あった。うちひとつはこれ




February 18, 2006

愛用ヘッドフォンについて

僕はかなり前からノイズキャンセル型のヘッドフォンを使っている。移動中にクラシック音楽を聴くにはこれでないと騒音で弱いフレーズが聞こえないからだ。でもボーズは買わない。本社のスタッフでこれを強く推しているエンジニアも何人かいたけど、ちょっと高すぎたのとかさばるのが厭で、僕が愛用してきたのはソニーのNC10というインナーイヤー・タイプ、これなら耳への収まりも良い。音のバランスもそこそこ満足できた。



そのあとNC11というモデルにも手を出したけど、これはあまり気に入らなかった。
もう10数年前にはなるだろう、実はソニーが「NUDE」とか名付けて小さくて丸い耳たぶのところに乗せるタイプのイヤフォンを初めて発売したときから、僕の耳にはこれがまるでフィットしなかった。聞いているとすぐ左耳からぽろりと落ちてしまう。だからiPodを買った時も付いてきた同タイプのヘッドフォンには目も呉れないでいた。


アップルストアのアクセサービジネスはと言えば、各社の製品を手広く呼び込んでそのマージンでバカに出来ない収益をアップルにもたらしているようだが、最近小型で高音質な耳栓(カナル)型のイヤフォンも注目されるようになっている。そんな中で昨年、EthymoticのER-6iという手頃なモデルを入手してからは、そればかり使うようになって、ソニーは引き出しの肥やしと化してしまっていた。音はやや高域アップライトな感じだけど、バッテリーの必要もないし、遮音性はむしろ優れている。逆にソニーのNC10はスイッチを押すと、音楽がミュートされ外部の音がマイク経由で拾われるので、人から話しかけられたときでもイヤフォンを外す必要がないのは便利だった。あと、このER-6iは白いモデルだったので、難点と言えば使っているうちに耳垢でイヤパッド部分が黄色く変色するのがみっともなかった。



今年1月の出張からの帰路、飛行機の中で突然左側の音楽が聞こえなくなって咄嗟にER-6iの断線と思った。だがよくよく聞いてみるとかすかに音は出ているから断線じゃないような気がする。ええっ、一年も経たないで故障なの?だけど原因不明。で、ここしばらくはNC10を引っ張り出して聞いていたけど、やはりこうなると後戻りは出来なくて耳栓型でもう少し質も上げたいという気持ちが強く、Shure E4を購入した。



これはもう高域の立ち上がりの質がまるで違う。高いだけのことはあったと納得。全体のなめらかさではなく高解像度のスピード感が小気味よく際立って、低音の誇張もないがやや細身かなと思う。でもバランスは優れている。耳栓の種類も豊富なので次のフライトがちょっと楽しみ。




February 25, 2006

なぜか?絵も音も凄い!

僕はかなり前からノイズキャンセル型のヘッドフォンを使っている。

iMacMacBook Proがようやく店頭に姿を現したようだが、僕は先日17インチのインテルiMacを購入した。我が家に9代目マックと言うことになる。まず会社にそれを持ち込んだのはドルビーが発売予定しているMedia Producerというアプリを試運転してみたかったからだ。

Media ProducerをインストールしたiMac


Dolby Media Producerは次世代光ディスクに採用されるTrueHDやDolby Digital Plusの音声フォーマットを処理できるドルビーとしては初めてと言うべきソフトウェア製品で、マック上で走るので例えばPro Toolsのある作業環境との親和性も高くなる。たった16万円程度のiMacが使い物になるのかどうか、インテルチップという興味もあって何しろ実験ということになった。

再生する素材はラスベガスの民生機器展でデモした映画とクラシックコンサートのシーンで、映像はQuickTime HDに取り込んである。音は5.1chのTrueHD(ロスレスPCM)で映像同期したファイルをFirewireインターフェース経由で視聴室のAVアンプに接続する。

まず諸々の環境設定はコアラ君に頼んで、じゃあ行ってみようか!と再生を始めた瞬間に一同驚きを隠せない。何でなんだ!メモリーは買ったままの512Mなのに、スタジオ常設のG5で再生した時のような映像のもたつきもないし、音が俄然良くなっている。(但しこの時点ではフルスクリーン再生はしていない。)「デジタル系で音が変わる」なんて言うとたいてい技術屋にバカにされるけど、これは喩えて言えば、収入は同じでも住まいと言う器(箱)の良し悪しで快適度が変わるようなもの。実験というのは条件を細かく整合して初めて比較に正しい意味があるので、感覚的な印象に過ぎないかも知れないが、ずっと試聴を続けてきた全員が同じ感想を持ったところに意味がある。


で、iMacの何が良いんだろうということになるわけですが、まず思い当たるのはインテルプロセッサ。どうもデュアルコアの描画性能はG5をクアドにしても負けるかも知れないくらい良いという噂もあります。映像のフレーム落ちとかしながらその処理負荷の合間にオーディオデータを転送しているわけだからうまくデータが間に合っているのかどうか、少なくともデータ欠落みたいなエラーは聞こえてないけれど、僕らは中で何が起こっているのかまではモニターしている訳じゃないからね。デジタル系ってジッター的な時間軸の揺らぎがモロ、音質に影響すると思って良い。ジッター精度という面では1394やHDMIも???とさえ言われている。


ともかく一通り試聴を追えて、何か、みんな納得。春の製品導入デモはG5止めてこれで行こうよ、と言う話になる。でも自宅用iMacをしばらく供出というわけにも行かないから、今期予算取ってないけどもう一丁買っちゃおうと話が盛り上がった。





February 26, 2006

荒川静香のヘッドフォン

トリノの荒川選手は断トツに素晴らしかったですね。舞う以前に氷の上に立っただけで、素顔の時とは別人のような気品がテレビ画面の外にまで放射していました。自分のフリー演技に選んだ曲「トゥーランドット」を開会式でパバロッティが歌ったことで「運命的なものを感じた」と言っていたけど、その通りになってしまった。

「金メダルへの道」©2006 NHK


彼女が自分自身に集中するためサッシャ・コーエンの演技は見ないようにしていたとインタビューで答えていたのはその通りで、25日土曜日のNHKスペシャルの番組でヘッドフォンをかぶって出番を待つ姿が画面に出てきた。
荒川の愛用モデルはBOSEのノイズキャンセルフォンQuiet Comfortみたいです。前々回のブログで「僕はボーズは買わない」と言ったヘッドフォンだ。高いけど、確かに周りの騒音から自分を隔離してくれるという点では正しい選択で、彼女の集中力に一役買ったのは確かだと思う。選手っていろいろ努力してますね。それで、君はあのとき何を聴いていたんでしょうか?




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さらに続く・・・